パワーハラスメント

株式会社ゆりかご 介護保険制度 その他

学生から医療や福祉の業界に飛び込んだ人には、当然のことかもしれない。しかし、別の職種や業界を経験してこの業界にくると、ときどきびっくりするような出来事に遭遇する。

先日、一本の電話がかかってきた。

事務員から聞いた話によるといきなり頭ごなしに…怒鳴り込んできた。

「なんて事業所だ!そっちがやっている行為は違法行為である!」

自分の名前もろくに名乗らず、いきなりの罵声に、事務員も困惑。

聞けば、ある病院の院長とのこと。その病院のDr.はなぜ怒っているのかを尋ねたところ、どうやら外来で来ている患者さんについてご家族とお話しをされていたところ、そのご家族のやり取りから、私達がとんでもないことをしている!と思ったようである。

具体的な内容は、あるご利用者(Aさん)は、とある事業所のケアマネージャーさんが担当で通院や生活支援での訪問介護の依頼を私達は受けていた。そのAさんのご家族が外来受診時に、薬をほしいといってきたそうである。そのDr.はご家族がほしがっている薬は3月末に14日分処方したもので、もう3ヶ月経過しており、当然そのお薬は残っていない計算になる。しばらく処方していないお薬なのに、Aさんのご家族は最近薬がなくなったので、もらいにきた…と言ったようである。Dr.は不思議に思うので、当然理由を聞く。するとAさんのご家族は私達の職員の名刺をDr.に見せて、この人に聞けばわかる、と言ったそうだ。その名刺は確かに私達の職員(女性)であり、名刺にはそのもらいにきた薬の名前が女性らしい書体で書いてあったということ。

この状況でDr.は、頭の中でこんな仮説を立てたようである。
「この事業所が、別の利用者の余った薬を飲ませていて、無くなってしまったからご家族を使って薬を取ってくる様に、指示をした。名刺に薬の名前を間違わないように書いておいて…、だから前回の処方からこれだけの期間が空いているのだ。他人の薬を使い回ししているに違いない。なんていい加減な事業所なのか!」
そして、ご家族の目の前で電話をして、その第一声が、さっきの内容「なんて事業所だ!…」につながるのである。

とても自由な発想であるが、何を根拠にそんなことを言っているのかわからない。こちらで行なっている全ての事業で、そんな前例は一つもないし、そんな考えだって思いつかない。名刺を渡したのも、Aさんが在宅生活されていたときに、院内付き添いを行なっていて、はじめましてということで渡した名刺。薬の名前については誰も書いた覚えは無い。ましてや薬の使い回しが危険なこと、違法行為であることも私達は当然理解している。

さらにこのAさんは、在宅生活を4月中旬で終了し、現在は施設入所されていて、私達も当然関わってはいない。在宅時のAさんのケアマネージャーは、その今入所されている施設のケアマネージャーであり、当然入所後の情報は私達には何の関係も無いので、情報だって入ってきていない。そんな状況でこんな電話を受けて穏やかで入れるわけが無い!Dr.は「責任者を出せ!事実確認をし、報告しろ!」といって電話を切ったようである。こちらでは、私達がAさん在宅時の受診記録などすべて記載していたので、その薬の最終処方日もわかる。その日以来、入所されて関わっていない、その憶測は当然、事実無根であった。責任者はその日、不在であった為に、電話を受けた事務員がそのことをDr.に伝える為に電話をした。

すると、その怒り狂った第一回目の電話とはうってかわり、冷静な声で「そうですか」ということ。しかし、その後が私達の怒りを膨張させる。

Dr.「私もいろいろな施設で嘱託医も行っていて、介護現場は良く知っている。薬のたらいまわし事例も聞いたことがあった。そのことがピンと思いつき、今回のケースだと思った。そちらがそんなことをしていないというのであればそれで結構。」

このDr.が言っていることは、介護に携わる全ての人々を侮辱する言葉と感じてしまうのは私達だけだろうか?そんなことをいってしまえば、病院だって、入院が必要な患者を県外に捨ててみたり、聴覚障害についての診断書を社会保険労務士と結託し、偽装してみたり、悪質なことをやっているではないか!そういうニュースを聞いて、あなたの病院もやっているだろう!となんの前触れもなく電話で怒鳴られたらどんな気持ちになるだろう?

医師という職業は、様々な検査結果や診察での状況などをみて、いろいろなエビデンスから診断をしていく職業ではないのか?すなわちDr.こそ、根拠や相手に対しての言葉などをもっとも大切にする人たちであると思う。そのように尊敬の意を持って私達はDr.に接してきたつもりである。だからこそ、今回のことは許せない。

責任者宛の電話ということもあったので、本日私が直接Dr.に電話した。

Dr.「あぁ、そのことは先日の事務員さんから説明を受けたので、わかっています。」
私「そういうことではなくて、そちらの電話のかけ方について疑問を呈します。」
Dr.「あぁ、苦情ですか。言葉の配慮が足りなかったのであれば悪かったと思います。しかし、そのような悪い印象を持たせるのはそちらにも責任があります。」とのこと。
聞けば、以前に当事業所のケアマネとやり取りの中で不快感が残るやり取りがあったらしい。その内容についても調べたが、決して悪質なものではなく、ご家族との間での伝達ミスなどにより、生じた誤解であった。もちろん、Aさんとは関係の無いことである。
私「その当時(約1年位前)に当社のケアマネが未熟な点もあり、不快な思いをさせたこと、ご指導を受けたことは真摯に受け止めております。しかし、それでも今回のことはあまりにひどいのでは?」
Dr.「わかりました、言葉は慎重に使いましょう。まだ診療中なので電話をきりますよ。」

なんだか面倒くさいクレーマーが電話してきた、そんな対応である。これが謝罪なのか?と思う。
根拠も無く、大した関係も無い者が、急に電話越しに、医師という看板をひっさげて、怒鳴り込んできたら、介護従事者にとっては、脅威である。

このDr.がとった行動の背景には、介護従事者を馬鹿にしているということが誰でもわかる。根拠も無く、いきなり電話で怒鳴るなんて、普通の人間であればでいないであろう。疑わしいのであれば、通常の話し方で、Aさんのご家族からのこんな報告を受けた、ご家族がそちらの名刺を持ってきている、事実確認をしてもらえますか?これでOKであろう。いきなり怒鳴る行為の背景には、相手を人としてみていない、馬鹿にしていると考えるのは当然だ。しかもこのDr.は間違っていると指摘を受けたら今度は、介護業界の一部の悪者の印象をそのまま引用したり、ご家族のせいにしたりする。

前々から感じていたが、この資格制度に潜むヒエラルキーが医療や介護全体を駄目にしていると感じる。介護業界内でも当然ある。(ケアマネとヘルパーの関係性など)医療と福祉の連携というが、その連携を阻害する原因は介護側にあるか?全体の傾向で見れば医療側にあると現場ではだれもが感じているはずだ。介護業界が未熟な部分がであり、またスタッフも知識など乏しい人間もいて、連携を阻害しているということもあるであろう。介護従事者は、Dr.や看護師から罵声を浴びせられることは多い。しかし介護従事者が医療従事者に罵声を浴びせる場面は見たことがない。介護の教科書には、医師やヘルパー、ケアマネージャーはチームであり、それぞれの意見が尊重されると学んできた。そうでないのであれば、カースト制度のように、図でしっかりと資格による差を決めて、「担当者会議においては、ヘルパーの意見はDr.と比べ知識が無いのであるから、発言を控えること」とでも書いておいてくれた方がよっぽど現実に近くて良い。

日本国憲法第14条 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

私自身の個人的な考えでは、福祉というものは、あくまで医療というインフラのもとに成立するものであり、福祉活動において、医療情報はその利用者の安全に資する最高かつ必要不可欠の情報であり、医療従事者はそんな自分達にとっては最高の情報提供者であると感じている。だからこそ、敬意を持って接する。

しかし、介護従事者は、奴隷でもなければ、動物でもない。人格を持った人間である。社会に出れば、お互い一個人であろう。そこに人権蹂躙を容認する状況がなされても良いのか?

私は今の仕事を誇りに思っているし、命を懸けている自負がある。地域で24時間対応事業所が少ない中で、深夜でも電話があればすぐにかけつけて、少しでも利用者の安心へとつながる努力をしている。深夜の緊急の電話要請は、ほとんど責任者である私が出動する。当然私にも生活があるが、家族の理解を得て、仕事をしている。理想から目をそらさずに、自分なりに精一杯努力しているつもりである。

最後に悔しい思いをした私は、そのDr.に「私は命を賭けて仕事をしています。」と言った。
その言葉を聞きDr.は、鼻で笑いながら「それは大袈裟でしょう。一生懸命仕事をやっている、それでいいではないですか。」
大袈裟な表現かもしれないが、鼻で笑われる筋合いは無い!

これ以上、このDr.と議論しても無駄なエネルギーと時間を消化するだけだと感じ、言われるままに電話を切った。

最後にこのような記事を書くと誤解を招くかもしれないので、あえていっておきますが、こういうDr.はごく一部だと思います。
そして私達は、前述したとおり、医療という基盤にのって、はじめてできる仕事をしていると思っています。
医療従事者の皆さんの言葉は、とても大切であり、その考え方も非常に勉強になりますし、尊敬しております。その頂いた情報があるからこそ、私達は安全という担保を持つことができると思っています。

だからこそ、今回のことは許せないのです。

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